始まりの始まり

9/30
前へ
/47ページ
次へ
「ふぅぅぅ…疲れたにゃ~、今日は今日でゆったりまったりしたいと思っちゃうにゃ~…」 「私も凛ちゃんに同じく今日はゴロゴロしていたいかなぁ…」 就寝する部屋のベッドの上で猫のように四つん這いとなって背筋を伸ばす凛、ぐでっとだらしない様子の穂乃果。 冷蔵庫に大量の食材をしまったり、荷ほどきをしていたら既に陽は落ちかけていた。 橙色に染められ始める草木。 時期が時期ならひぐらしがないている、そんな時刻。 「そうですね、この暮れ方だともうすぐに暗くなってしまいます。それに夜の山中は本当に危険ですから、今日はもう中で過ごすのが無難でしょうね」 山の中なので虫はもちろん動物だっている。 リスやタヌキといった動物はさして危険性はないものの、熊となってくると話は変わってくる。 成人男性であれ遭遇し、襲われればたちまち見るも無残な姿となってしまうという話もある。 冗談では済まないことになってしまう。 「2人のことだから一応釘を刺しておきます…まぁ今日はしないでしょうが…どういった理由があろうと無断での夜の外出は控えてくださいね、…心配しますから。わかりましたか凛、穂乃果?」 「「はーい」」 「…寝そべりながら言われても説得力がないというか、本当に理解してくれたかどうか…」 気の抜けた返事に多少の不安はありつつも 「では2人とも、特にやることもないのなら料理組のところに行ってお手伝いでもしましょうか」 いまキッチンではにこ、真姫、絵里が晩御飯の調理をしてる。 希と花陽、ことりは少し冷えてきたので暖炉に火をつけるための作業を行っている。 「いいんだけど…私何も作れないよ?」 「凛も…カップ麺ぐらいなら作れるかな?」 食べる専門家とラーメン大好きっ子がそう答える。 「何も作る側に回る必要はないですよ。人数も足りていそうですしね。私たちは…そうですね、食器の準備やセッティングのお手伝いをしに行きましょう」 「「は~い」」 二度目の気の抜けた返事だったが、さっきより少し楽しげな声だった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加