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なぜだ。どうして、いない。 そんな気持ちばかりが浮いては沈み、浮いては沈みを繰り返す。喉の奥が何か詰まったように落ち着かない。 自宅であるアパート前まで重い足どりで辿り着く。 カギを差し込んで、閉から開へ。扉は簡単に開く。 ああ、あいつの心の中にもこんな風にカギを開けて入れたらいいのに。なんて、ちょっとくさいな。 玄関から廊下、そしてベッドに直行。うつぶせにダイブ。おお、沈む沈む。 しがないサラリーマンのオレが唯一こだわったのが、ベッドのマット。 --えへ、あのね、ふうちゃんのベッドが一番寝心地がいいの。だから後もうちょっと、もうちょっとだけ。ね? ベッドに顔をうずめて息を吸い込むと、オレの好き な彼女の髪から香る、甘いのコロンの香りがほのかにした。三日前までこのベッドを占領していた彼女は、彼女は‥.。 ほっといたら、いつまでも沈み続ける思考に蓋をし、喝を入れるために立ち上がる。台所に移動して、インスタントの珈琲を赤色のマグカップに入れる。ふと、しわくちゃになった上着のジャケットから煙草の箱の中から一本取り出して、一服。 ふぅ、とため息混じりの煙がモクモクと。
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