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「例のブツだ」
「金だ」
物陰に身を潜める俺の目線の先で繰り広げられるのは、アタッシュケースの交換。
それが、あまり良くないものなのは、ここが人気のない夜の港で行われている事で分かる。
物音ひとつしない、僅かな灯りの下で行われる取引。
誰の護衛もなく、二人っきりで行われるのは、その取引内容の秘匿性と、どちらも凄腕なのを物語る。
「では」
アタッシュケースの中身を確認もしないで交換した二人は、一度だけ握手をすると、互いに背を向けて歩き出す。
クソッ!
取り押さえたくても状況証拠しかない現状では、それが……。
パン!
かなり遠くで聞こえた乾いた音。
それが銃声だと気づいた時には、すでに一人の男が倒れ、慌てて走り出したもう一人も、再びの乾いた音とともに倒れる。
微動だにしない男達。
出血こそほとんどないが、頭を撃ち抜かれて生きてる人間はいないだろう。
しばらく様子をみるも、その後、撃ってくる気配はない。
ーー見逃してやるってか?
奴等にとって、ケースの中身が外部に漏れないのであれば、俺達が持っていても構わないか。
ナメられたものだ。
だが、どのみち、元々は同じく国を護る存在の俺達と奴等。
互いに不利になるような事は、しないし出来ない。
ーークソッ!
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