タバコの甘み

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「俺だ。 ターゲットは死亡。カンパニー狙撃と思われる。 ブツは押収した。 夜明け前には片付けを頼む」 短く携帯で指示を出す。 これで、ここで俺がすることはもうない。 アタッシュケースだけを回収し、その場を離れようとすると、甘い香りが漂ってきた。 ーー狙撃手か。 目の前でターゲットを射殺された後、いつも漂ってくる香り。 タバコの匂い。 人目を気にする俺達。 匂いや火を発するタバコを吸うのは、プライベートか仕事が終わった時ぐらい。 ーーつまり、お仕事は終わりですか。 適当なコンテナを蹴りつけると、重い金属音が悲しく反響した。 「カンパニーの野郎、後始末は俺達ビュロウ任せかよ!」 イライラをぶつけたところで何にもならない。 ならないし、無駄でしかない。 ーータバコの煙の甘さを理解出来るようになったのはいつからか? ガキの頃は、あんな煙たい物を吸う大人が不思議で仕方なかった。 それでも、大人になった今では、甘い香り発するあの煙が、一時の安らぎを与え、心を癒すのだと理解出来るようになった。 だが、どんなに甘かろうと、あれは毒。 俺にとっては、毒でしかない。 次こそは。 次こそは毒に侵されることなく終わらせてやる! ~~~~~ 一人決心する若い男を、遠くで一人の女が見下ろしていた……。
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