第1章

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「必ず君を守るから」 フラグの立つようなセリフを吐いた直後だった。 「うわっ、止めろ」 男は警察官に捕まりあえなく御用となった。 そして、私は… いま、檻の中にいる。 「今日、未明に起きた警察官射殺事件について記者会見が開かれました」 テレビの画面には恰幅のよいいかにも偉い風貌の男が数人マイクの前に座っていた。 「今回起きた警察官射殺事件の容疑者ですが、一部で覚せい剤中毒者による犯行ではと言われておりますが、血液検査をしたところ容疑者の体内から《狂犬人病》のウイルスが発見されました」 記者たちがざわめく。 無理もない、狂犬人病は国家指定一種に該当する一級危険ウイルスなのだ。 「他に感染者は?」 一人の記者が皆を代表するように声をあげた。 「今のところ、人間への感染はありません」 含みのある言い方に他の記者からも声があがる。 「人間以外に感染したということですか?」 固唾を飲んで回答を待つ。 「誤解のある言い方をしてしまい申し訳ありません。もちろんこのウイルスは《人》《犬》以外には感染はしません。ただ…」 真ん中に座っている男は言いよどんでいた。 「おそらく、感染元である容疑者の飼っていた犬だとは思うのですが…」 意を決したように男はパソコンを取り出しある映像を流した。 そこには小学生くらいの子供が映っていた。 「この人物は誰ですか?」 「人物と言っていいのか…」 画面に近づいてきた子供の様相を見て記者が「ひっ」と声を漏らす。 「…この子は《狂犬人病》に感染した元犬です」 画面に映っている子供には頭から獣のような耳が生えており、口には大きな牙が突き出していたのだ。
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