プロローグ

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コツコツコツ 静かなオフィス街に響く、ヒールの音。 もう慣れっこになってしまったけど、暗い夜道はやっぱりちょっと心細い。 少し前に購入したタンクフランセーズに目をやると、もう二十三時近くを示していた。 こんなこといつものこと。 だけど、昼間はあんなに人のあふれているこのオフィス街も、このくらいの時間になるとパタリと人が消え去って、寂しい街に変わる。 もう、駅までのこの道を、何度往復しただろう。 ゆっくり歩けば、二十分。 だけど、一度たりともゆっくり歩いたことなんてなくて、いつもだいたい十二、三分もあればついてしまう。 あら、ここの工事はいつの間に終わったんだろう……。 少し前までビルの側面に足場があったのに、今はすっかり取り去られて、壁が綺麗になっていた。
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