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これだけ彼と一緒にいられたのだ。
もう、これ以上を望んではいけない。
必死に自分に言い聞かせる。
だって彼は、他の女のものなんだから。
そうやって、無理矢理自分の気持ちに蓋をする。
そして、溢れそうになる激しい嫉妬を、凍らせていく。
彼が立ち上がっても、見送りには立たなかった。
彼が玄関のドアを出ていく瞬間を、見たくなかったから。
彼が他の女の夫の顔になる瞬間を--。
「彩音、また連絡する」
私の頭を撫でて、彼は出ていく。
きっと私の気持ちを知っているくせに。
“バタン”と無情にも閉まったドアの音を聞きながら、静かに涙を流した。
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