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それからどれくらい時間がたったのかさえわからないほど、私は仕事に没頭していた。
「相澤、無理するな」
いつの間にか啓太さんが隣にやってきて、そっと耳打ちをする。
「いえ……大丈夫です」
「朝の件は悪かった。俺の力不足だ」
前を見据えたままそう呟く彼に、やっぱりこの人が好きだと思ってしまう。
私の仕事に手抜きはないことを、きちんとわかってくれているのだ。
「いえ。私の力不足です」
女でもできるんだって、思わせられなかった私が悪い。
最初から、同じ土俵に上がれないことに憤りを感じつつ、もうそれは仕方ないとどこかで思っていた。
「それと……朝はもっと食べろ」
たったひと言だったけど、上司としてでなくて恋人としての言葉に、涙が出そうになった。
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