激しい嫉妬

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「啓太、さん?」   いつもとは違って、彼に余裕がなく見える。 こんなこと、初めてかもしれない。 「俺、彩音のなにも知らないんだな。 朝食になにを食べるのかも、なにを悩んでいるのかも。 全部知っているつもりだったのは、思い上がりだった。 お前の足が痛むことも、滝本に先に気がつかれて……」   壁に追いやられ、彼の両腕が私を囲む。 「啓太さん……」   その通りだ。 こうして激しくキスを交わしても、知っているのは会社の顔と体の温もりだけ。 互いのことをなにも知らない。 「彩音。好きなんだ。自分が思っていたよりずっと、お前のことを欲している。 誰にも触れさせたくない。滝本には、渡さない」 滝本、君? 啓太さんは、滝本君に嫉妬してるの?  自分より先に私のことを知っていた滝本君に……。
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