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彼の腕の中で目覚める朝は、これで二度目。
今日家に帰ったら、次に会えるのはいつだろう。
こういう企業展があると、そのあとはフォローが忙しくて残業がぐっと増える。
元々木曜日にしか会えないのだ。
もしかしたら、しばらく会えないかもしれない。
「おはよ。彩音」
私に触れるだけのキスをして、枕元のタバコに手を伸ばす。
朝起きたら、タバコを吸う人なんだ。
彼が私の事を知らないように、私もまた、彼の事をなにも知らない。
壁にもたれかかってタバコを片手に、もう片方の手はまだ寝そべっている私の髪を梳く。
そのゆっくりした動きに身を委ねて、彼の肌に触れる。
ここに、私の好きな人がいる--。
「そろそろ、準備するか」
半分くらい吸ったタバコを灰皿に押し付けて、彼はベッドを出た。
この瞬間が、たまらなくイヤ。
仕事だとわかっていても、このまま時が止まってしまえばいいのにと思う。
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