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身支度を整えて彼の部屋を出ようとすると、啓太さんは私の腕を引いてキスをした。
こんなことしたら、離れたくなくなってしまうのに。
「行かせたくないな」
私を腕に閉じ込めてそう言う彼は、きっとずるい。
彼の深みに、ますますはまってしまうから。
「もう、ダメよ。時間がないわ」
本当はずっとこうしていたいのに、大人ぶった発言をして、自分の気持ちを振り切った。
幸い誰にも見つかることなく、自分の部屋に戻ることができた。
少しも乱れていないベッドのシーツを見て、わざわざ乱す。
こんなことする必要なんてないのに。
滝本君がここに入ってくるわけではない。
だから、誰も啓太さんの部屋に泊まったことなんて気がつかないだろう。
だけどシーツを乱してアリバイを作るのは、私の中に罪悪感が渦巻いているからなのかもしれない。
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