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「京葉大の資料を借りようと思って、部屋をノックしたんですけど、返事がなかったから」
「えっ、あの……」
まさか、滝本君が部屋に来たなんて。
思わぬピンチに、上手く頭が働かない。
仕事ならいくらでもピンチを切り抜けてきたというのに。
「疲れて寝てたんじゃないのか? 昨日は、ハードだったしな」
しどろもどろになる私に、助け船を出したのは啓太さんだった。
「そう。すぐに寝ちゃって。ごめんね」
「そうだったんですか。ちょっと心配しましたよ。後で、見せていただけますか?」
「うん。わかった」
その後の会話を、なにも覚えていない。
啓太さんが、私の部屋に来ていなくてよかったと胸を撫で下ろしながら、“不倫”という事実に、頭を殴られる。
絶対にバレてはいけない関係。
それがどんなに苦しくても。
バレた時、それは終わる……。
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