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「拓也さんはそうしてたじゃないですか。無いに等しい才能を信じてた」
翔太の言葉は鋭く拓也に突き刺さった。
「……うるせぇよ」
拓也にとって一番触れられたくなかったことだ。結局、拓也は野球を諦めることなど出来ていなかったのだ。
「図星を突かれて出てきた言葉はそれだけですか?」
ますますカッコ悪いですねと挑発的な表情を浮かべる翔太。後輩にここまで言われても、拓也の気持ちは揺らいだままだった。
「お前に何が分かるんだよ」
纏まらない気持ちのまま、拓也の口から出た言葉は途轍もなくカッコ悪いものだった。
「分かりますよ、あなたのことなんて。わざわざ同室にもなって、自主練のパートナーにまでしたんですから。あなたは何があっても野球にだけは妥協しなかった。気持ちが枯れたような奴に俺が好き好んでついて行くとでも思ってますか?」
そのボロボロの掌が何よりの証拠です。と翔太は拓也の掌に触れる。その翔太の体温は、硬く冷え切った拓也の掌には少し熱すぎた。
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