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「あれ、拓也さん。今日も居残りですか?」
真新しいユニフォームに身を包んだ部員が練習場に入ってきた。彼が着ていたのは公式戦用のユニフォーム。その背中には、大きく「一番」が縫い付けられている。
「お前こそ、そんなもん着たまま自主練するのかよ」
拓也の問いに対して、「一番」の彼は見せつけるかのように着崩していたユニフォームを着直した。
「もうちょっと大きめの方が格好いいと思いません? 部の支給品なんで文句は言えませんけど」
無邪気に笑う彼、山崎翔太こそ、この野球部の絶対的エースだ。甲子園常連校に鳴り物入りで入学し、一年生の秋からエースに君臨。二年生になった今では、プロ注目の選手となっている。
「……ずいぶん調子に乗った発言だな。ベンチ外の三年に聞かれないようにしておけよ」
殴られかねないぞと拓也は忠告する。そんな先輩の忠告も、翔太が気にする様子はなかった。
「この時期に俺を殴れる人っているんですかね?」
わざとらしく首を傾げる翔太。答えの分かりきった問いに対して、拓也はまた溜息をついた。
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