僕らの夏は始まらない。

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 「で、練習しないで何するんだ?」  「言ったじゃないですか。拓也さんとお話ししたいんですよ」  あからさまに嫌な顔をする拓也。  「メンタルトレーニングみたいなものです。拓也さんに俺の気持ちのモヤモヤを解きほぐしてもらおうと思いまして」  「お前に悩みなんて無縁だと思うけどな」  その奔放な言動が許されている環境にいてストレスを感じることなどあるのだろうか。拓也は疑問に思う。  「エースにも色々あるんですよ。背負うものの重さとか。……拓也さんには分からないでしょうけど」  へらりと笑う翔太だったが、その笑顔はどこか強張っているように拓也に映った。  向かい合って座った二人は黙ったままだ。静寂に包まれた室内練習場に、空調設備の風の音だけが響き渡る。沈黙に耐えかねた拓也が口を開きかけた時、翔太が先に言葉を紡いだ。
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