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「最初に拓也さんに会った時に分かりました。わざわざ挨拶したのに、興味無さそうに対応されて。この人は高校野球や甲子園にくだらない幻想を抱いていないんだなって。案の定あなたは俺に媚びてこなかったし、理不尽な上下関係を強いることもなかった。だから寮も同室にしてもらいましたし、毎日一緒に自主練してるんです。ベンチにも入っていないダメなキャッチャーの拓也さんとね」
翔太は悪びれる様子もなく、真正面から拓也の悪口を叩いた。その様子に拓也はわざとらしくため息を吐いた。
「そんな理由で俺はお前にちょっかい掛けられていたわけか。俺、周りにエースに取り入って気に入られたクズ野郎って陰口叩かれてたんだけど」
責任取ってくれよと拓也が言うも、そんな見る目の無い奴らのことなんて知りませんよと一蹴された。
「そんなに気にいってくれたんなら、俺を正捕手にしてくれても良かったのにな」
お前なら出来るだろ? と拓也は笑う。
「俺のこと大好きな監督に言えばやってくれるでしょうね。ま、そんなこと絶対に言いませんけど」
茶化したことに対して真面目に返されたからか、拓也は面食らったような顔をする。そんな様子にも我関せず、翔太は真面目な顔のまま立ち上がって、吐き捨てるかのようにこう言い放った。
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