2人が本棚に入れています
本棚に追加
昌彦は、おもむろにリビングルームのソファに座った。
麻里子はキッチンルームで、何かを用意しているようだ。
慣れた手つきにより、テレビのリモコンでスイッチをオンにした。
画面には、ニュースキャスターが映っている。
「まだ食べてないんでしょ、今作ったの」
麻里子が、トレイに載せたビールとグラスコップを持ってきた。
思わず、昌彦の顔が綻んだ。
麻里子もソファに座ると、テーブルの上でコップにビールを注ぐ。
「さ、どうぞ」
麻里子の言葉に反応するかの様に、グラスを口に運ぶと
一気に飲み干した。
グラスを空にすると、急にお腹が空いてきた。
満を持した様に、麻里子がキッチンルームから、
ピザを皿の上に載せ昌彦の前に置いた。
「美味しそうだ!」
そう言いながら、昌彦がそれにパクついた。
ニッコリ笑いながら、2杯目のビールをグラスに注ぐ。
「これは、麻里子が焼いたのか?」
「いえ、デリバリーよ」
ピザは、チーズとトマトソースの濃厚な香りが鼻をつく。
ビールとピザで、やっと大分気持ちも落ち着いてきていた。
昌彦が、何かを思い出した様に。
「君、スマホを持ってる?」
突然、麻里子の顔を覗き込む。
「いえ、携帯電話しか持っていないわ」
ピザをビールで、流し込みながら。
「ラインって、分かるかな?」
昌彦の問いに、麻里子が首を横に振った。
「電話しか、出来ないわ」
「ちょっと、見せて」
麻里子は、上着のポケットから携帯を取り出すと、
昌彦にそれを渡した。
冷え症の麻里子は、常にブラウスの上にはカーディガンを
羽織っている。
最初のコメントを投稿しよう!