第1章    横浜湾岸

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昌彦は、おもむろにリビングルームのソファに座った。 麻里子はキッチンルームで、何かを用意しているようだ。 慣れた手つきにより、テレビのリモコンでスイッチをオンにした。 画面には、ニュースキャスターが映っている。 「まだ食べてないんでしょ、今作ったの」 麻里子が、トレイに載せたビールとグラスコップを持ってきた。 思わず、昌彦の顔が綻んだ。 麻里子もソファに座ると、テーブルの上でコップにビールを注ぐ。 「さ、どうぞ」 麻里子の言葉に反応するかの様に、グラスを口に運ぶと 一気に飲み干した。 グラスを空にすると、急にお腹が空いてきた。 満を持した様に、麻里子がキッチンルームから、 ピザを皿の上に載せ昌彦の前に置いた。 「美味しそうだ!」 そう言いながら、昌彦がそれにパクついた。 ニッコリ笑いながら、2杯目のビールをグラスに注ぐ。 「これは、麻里子が焼いたのか?」 「いえ、デリバリーよ」 ピザは、チーズとトマトソースの濃厚な香りが鼻をつく。 ビールとピザで、やっと大分気持ちも落ち着いてきていた。 昌彦が、何かを思い出した様に。 「君、スマホを持ってる?」 突然、麻里子の顔を覗き込む。 「いえ、携帯電話しか持っていないわ」 ピザをビールで、流し込みながら。 「ラインって、分かるかな?」 昌彦の問いに、麻里子が首を横に振った。 「電話しか、出来ないわ」 「ちょっと、見せて」 麻里子は、上着のポケットから携帯を取り出すと、 昌彦にそれを渡した。 冷え症の麻里子は、常にブラウスの上にはカーディガンを 羽織っている。
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