第1章    横浜湾岸

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先に惚れたのは麻里子だったが、昌彦も麻里子の告白には 断る事など出来る筈も無い。 何故なら五代物産唯一の、美女だからだ。 昌彦と麻里子が愛し合う仲になるには、それ程時間が掛からない。 麻里子に対する愛のプレゼントは、この億ションだったのだ。 しかし、昌彦には問題がある。 それは、昌彦に妻子がいる事だ。 麻里子にもそれは承知していたのだが、昌彦に対する愛情は 冷める事無く、益々燃え上がる結果となった。 「僕達の連絡方法は、電話をやめてメールにしよう」 「どうして?」 麻里子が少し、首を捻った。 「君からの電話に、妻が気づいてる」 動揺する麻里子だが、すかさず昌彦がワイシャツのポケットから スマホを取り出す。 「ラインを、使おう」 「私、分からないわ!」 「大丈夫、僕が教えるから」 そう言うと、昌彦がラインアプリをインストールした。 「君のアカウントをラインに登録する。君の個人情報を 教えてくれ!」 麻里子は、全ての個人情報を教えた。 「あとは、プロダクトアクティベーションを取得するだけだ!」 「プロダクト……………アクティベーション?」 麻里子には、何の事だか分からなかった。 「ライセンス認証だよ、シリアルナンバーコードを取得するのさ!」 シリアルナンバーとは4ケタの暗証番号で、アプリのコピーを 防ぐための認証番号だ。 昌彦が送信をすると、コンピューターサーバーから SmSという形でメールが送られて来た。 メール受信箱には、4つの数字が書かれてある。 昌彦がコードを入力すると、ラインのホームページが開いた。 「これで、アカウントの作成完了だ」 「これからは、これで?」 麻里子の問いに、昌彦が頷いた。 「既に、妻は探偵を雇っている。今バレるとまずい。 君の携帯は、解約しておくから」 そう言って昌彦は、麻里子の携帯をワイシャツのポケットに 放り込んだ。 「これからは、違う方法で逢おう」 壁時計を観ると、午後11時を過ぎている。 「京急の最終で帰るよ」 昌彦がソファから立ち上がった途端、麻里子が昌彦の胸の中に 飛び込んだ。 2人は抱き合ったまま、微動だにしなかった。 「車で送るわ」 そっと麻里子が、耳元で囁いた。 「駄目だ!探偵が何処で張ってるか分からない」 じっと昌彦の瞳を見詰めたまま、頷く麻里子。
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