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***side亜美***
知らない天井。私は固い床にそのまま寝ていて、上には知らない上着がかけられていた。
「……あ、目が覚めた?」
男の声に驚き振り向く。椅子に座っているニット帽を被った、ヒゲの男。気まずそうに笑いかける彼の事はまるで知らない。
「あなたは……?」
「ああ、やっぱり知らないか。まいったな……」
男はうつむいて頭をバリバリと掻いた。
「知りません。あなたの事なんて」
見たことがない。ここはこの男の家かと思ったが、それも違うらしい。どうやら山小屋のようだった。窓から見える外の景色は雪が吹き荒れていた。
「じゃあさ、自分の事はわかる?」
「わかります。私は亜美です。それから……」
亜美で……亜美……。
名前以外の情報が頭の中を探っても出てこなかった。確かにあるはずなのに見つからない。
なぜここにいるかなんてこともまるで覚えていなかった。
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