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「その女生徒は、結構な図々しい性格でね、偉大な発明家は渋々自分の秘密を話したそうよ。その秘密とは・・・・」
僕の痺れは、どんどんと広がり、膝から下、手の先から肘まで、何かを恐れるように小刻みに震えた。何かが、何かが近づいてくるような気配が、体の内側から感じる。
「その秘密とは将来の夢。偉大な発明家は秘密を言いふらされると思っていたけれど、女生徒はそのようなことをするどころか、その夢を応援したの。そんな女生徒に『彼』が恋をしたのは言うまでもない」
あぁ、そうだね。『彼女』はそんな女性だった。でも、君が話しているのはヒントではない。それは、ただの、思い出話だ。
僕の痺れが背骨を伝い、頭蓋を揺さぶる。まぶたは重く、開けることもかなわない。
「しかし、女生徒は彼のもとを去りました。理由は・・」
同級生によるいじめが原因の転校。急な出来事だった。
「彼はその後、夢のために勉学に没頭しました。誰もが幸せになれるように、女生徒が笑って暮らせるように。そんな世界を生み出すために。そんな彼の夢を濁らせたのは、成人してから数年たった頃届いた、一通の手紙でした。内容は・・」
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