Quiet place

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 彼女の葬儀を知らせるものだった。死んでしまったのだ。自ら命を絶った。 「皮肉なことに、社内でのいじめが原因でした。彼は分からなくなりました。彼女を苦しめ、自分の元から彼女を二度も遠ざける、こんな醜い人間達がひしめく世の中の、救いようもない獣の幸せのために、彼女が応援してくれた夢の装置を開発しなくてはならない理由とはなにか。彼女のいない世界の存在意味とはなんなのか。そんなとき、彼女の遺品を見てある計画を立てました」  遺品のノートには昔から好きだったデジタルモンスターとファンタジーな世界が描かれていた。そのノートには醜い人間などは一人たりとも描かれていない。彼女の、僕らの理想の世界。彼女がそれを望むのなら、そうなのだとしたら、僕が叶えよう。全ての人間を一掃して、彼女が好きだったデジタルモンスターで世界を埋め尽くそう。 「遺品を目にしたときの想いをきっかけに三十年掛けて、人間の五感を仮想世界へ投影する装置である、フルダイブシステム・ユートピアを彼は完成させました。そして、全人類が仮想世界へ潜ったタイミングに、彼の濁ってしまった夢の計画が発動された」  全人類を仮想世界に拘束し、仮想世界でのペットに人工知能を与えた。仮想世界で人類と同等以上の知能を得た彼らは、独特の進化を短時間で取得した。それはまるで。 「彼女が愛したデジタルモンスターそのものだった。やがて、人類よりも優れた種族となったデジモンは人類に反旗を掲げた。彼の願い通り、人類の魂をデジモンによって無残に破壊し尽くし、全人類を廃人化させる。はずだった」
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