0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
夕刻
「…あっ……」
「えっ…///」
奇妙な音が聞こえる。
受験から早一年。もう女子高にも慣れ、学校生活を満喫していた頃だっただろうか。私は3Fの演習室の前を通ったとき、変な声を聞いてしまった。
「…っあっ…」
「や…///」
「だめっ…」
声の主が気になる。どうも男性の声らしい。
友人からBL小説を押し付けられていた私は、瞬時にあられもない男性の姿を想像してしまった。嘆かわしい。
「フッ…これも女子高に入った運命というものよ…」
声の主がいなくならないうちに現場を押さえよう。
そう私が決心したことも不思議な事ではない。
「やめっ…」
下だ。
階段を下った。目の前は2‐4。しかし誰もいない。
「…外したか。」
するとさっきよりも大きな声が聞こえた。
「アーッ♂」
下だ。
1Fの端の1‐4。そこで私は驚愕の真実を目にした。
「あー、えー、いー、うー、えー、おー、あー、おー」
声は演劇部の発声練習だったのだ。
「チッ…つまらぬことこの上ないわ。」
明日は小テストだ。さっさと帰ろう。
私はカバンを持ち直し、裏門から外へ出た。
事実は小説よりも奇なり。よく言ったものだ。
私はあれほど奇妙な体験をしたことがない。
1Fの端での発声練習の声が3Fまで聞こえるはずがないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!