第1章

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この美人を捨てて他の女に走る男の判断が正しいかどうかは私の知るところではない。私はプロの狙撃手。依頼がある。その任務を果たす。私の存在理由はそれだけだ。 私は男の立ち寄る場所、行動範囲を彼女から聞き出した。 「まあ、一週間もあれば片はつくでしょう。では一週間後にここで落ち合うということでよろしいでしょうか。」 「はい、ぜひお願いいたします。」 私達は席を立った。 私の尾行は完璧であった。女が教えてくれた通りの道を男は歩いていた。このまま温かい家庭に帰れると思っているのだろう。悪く思わないでくれ、私は心の中で願った。私は気づかれないように背後に迫った。彼は全く気付かない。 私は十分な距離であることを確認すると素早く右手から拳銃を取り出した。男はやっと背後の気配に気づいたがもう遅かった。彼が振り向いた時には既に銃口が彼の額をとらえていた。彼の顔が恐怖でゆがむのとほぼ同時に私は迷わず発射した。 一週間後約束通り待ち合わせ場所で彼女と落ち合った。 「首尾はどうでして?」 「ばっちりです。ほら。」 私は携帯電話から証拠の画像を取り出した。 男は顔を水浸しにして泣いていた。 「ありがとう。これですっきりしたわ。」 彼女は報酬の100円を気前よくキャッシュで払った。 私は依頼を受けたとき、正直言って躊躇した。なぜなら男は年中組であり、年長組である私より年齢が一つ下だったからだ。 だが殺し屋は非情を貫かなければならない。心を鬼にして私は任務を引き受けた。そしてやり遂げた。 しかし、もう潮時だ。廃業しようと思う。来年は小学校へ上がる。しかもパパからは電子タバコをくすねていたのがばれ大目玉をくらった。ママからは、コーヒー牛乳を毎日飲むのは体に悪いとしばらく買ってもらえなくなった。何よりも私がこの仕事に虚しさを感じてしまったことが大きい。 私と依頼人は最初に会ったときと同じように無言のまま、第二児童公園のベンチから立ち上がり、そして別れた。明日から、私はぞうさん組、彼女はキリンさん組、別々の人生をあゆんで行く,なぜなら、それがこの世に生を受けた定めだから...。
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