1  Amore magica per voi

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「ここかあー」  琴音が引っ越してきたマンションはオートロック・コンシェルジュ完備。  琴音は高校を卒業して、音楽系の大学に入ることになった。子供の頃からやっているバイオリンの勉強をきちんとやるためだ。  予定通り引越しを終えて、少し落ち着いてきた一人暮らし4日目のことだった。  その日は日曜日だったので、引っ越す前に見立ててもらった引越し挨拶用の菓子折りを配ろうと思い立った。コンシェルジュ、両隣、上と下に配るのだと教えられていたので、まず両隣をやっつけた。このマンションは全室防音室完備を特徴にしていることだけあって、左隣はそこそこ有名なチェリストで、続いて上に行くと、出てきたのはこれから入学する大学の、卒業生の作曲家だった。  下を後回しにしたのには訳があった。最初にコンシェルジュに菓子折りを手渡して上下左右の隣人の情報をそれとなく聞き出したときに、下の住人だけは曖昧な答えをされたからだ。よほど言いにくい印象なのか、それとも何か言えない事情でもあるのか。  コンシェルジュのその反応が怖くて、後回しにしていたのだ。その怖さは当たったようで、少し外れた。 他の家もそうだったが、ネームプレートはなかった 。 出ないだろうと思いながらインターホンを押すと、意外とすんなりと扉が開いた。 中から出てきたのは、、アイドルグループ、Expresion――略してエクプレのセンターの、
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