第1章

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ファンタジーの世界に憧れたことは何度もあった。 ただRPGをやりこんだのでなく、その世界に居るつもりでプレイしていたのだから。 まあ、実際そういうことになったらいろんなものが大変だよな、と. 旅の道や、ポケットやバッグに入りきらない武器や道具の数々、火山や凍土などの極地。 とても、生きられるような気はしない。 実際、ゲームのキャラは何度かゲームオーバーになっているし。 オレ、秋雨楓のようなただの一般人じゃ無駄に死ぬだけだろう。 なのに、そんな極地にオレは居た。 砂、砂、砂。 一面砂に囲まれた場所で、丁度瓦礫で日陰になっている場所で、ぽつんと座っていた。 どこ、ここ? 砂漠なのか、砂浜なのか。 少なくとも両方も、我が埼玉にはなかったはずだ。 遠くのほうに見える大きな山の上から空に向かって伸びる光の柱なんてファンタジーそのもだ。 じゃあ、他の県か?国か?もしかして別次元?とか考えたがそもそもこの場所に来た記憶が無かった。 さっきまで直ぐそこに倒れていたのだ。 気を失ったように。 その方向を見て、丁度自分のあてはまる跡を見つめてみる。 周りには、さっき自分がここまで移動したときの足跡しかなかった。 運ばれたとしたら、周りに何かしらあとが残るのに。 いや……上から落ちてくれば残らないか? ヘリや何かで落とされるなら納得がいくが、そこまでする動機が分からない。 ここにオレを置いていくのが目的として、どんな理由や利益があるのだろう? 困らせたいだけなら、こんな面倒なことはしないだろうし。 「どうしようかなー……」 と、オレはポツリと呟く。 ここで目が覚める前は何があったんだっけ?と記憶をたどる。 思い出したのは炎だ。 帰宅途中の自分の周りを囲んだ炎。 何もかもを燃やすほど激しく燃えているのに、不思議と熱くなく、心地よい暖かさのあった炎。 まるで、オレに優しく忠告するように。 この先に、いったら後戻りは出来ないと。 確かオレは、その時に犬か狼の遠吠えを真似た様な少女の声を聞いた気がした。 そして、目の前の炎の中に人影が見え、それが手を差し伸べているように見えてしまった。 それに誘われるようにオレは…… 「炎に飛び込んだ……?」 そう、飛び込んだ。覚えてる。でも、無傷なのはなぜだ? 分からない……でも……一つだけ分かる。 「腹減った……」
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