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白い雪に当たった光は、ぼくの目には にじ色に見えた。
「おばあちゃん、雪はお日さまに当たると にじ色に光るんだね」
「そうかい。ゆき君には にじ色に見えるかい?」
ぼくはそっと、おばあちゃんの方を向いた。
おばあちゃんはじっと にわをみていて、そのよこがおは、やさしく笑っていた。
「おばあちゃんには何色に見えるの?」
「…そうだねぇ。おばあちゃんには色は見えないんだよ。お日さまがキラキラしていることしか、わからないんだよ」
「色が見えないの?」
ぼくは、おばあちゃんにも同じものが見えていると思っていたから、おどろいた。
「色だけじゃないよ。にわの木も花も、ゆき君のかおも空も、何もかも。ぜんぶ、ほんとうは何にも見えていないんだよ」
ゆっくりと話すおばあちゃんは、うそをついているようには見えなかった。
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