ハルヨビ

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「おばあちゃんの目には、何にも見えていないの?」 また、にわの木からパサパサッと雪が落ちた。 その音を聞いて目をさらにほそくしたおばあちゃんは、こえを出さずに笑いながら「そうよ」とうなずいた。 「でもね。見えなくてもわかることは、たくさんあるのよ」 そう言って「そうね。今、ゆきくんは、まゆげとまゆげのあいだに少しだけ しわができていて、口がちょっとだけポカンとあいているかしら」 と、ふふふっと笑った。 ぼくは、あわてて窓ガラスで自分のかおを見ると、おばあちゃんが言ったとおりのぼくが、そこにうつっていた。 ぼくはビックリしたんだ。 だって、おばあちゃんはずっと にわの方を向いていて、ぼくのかおを見ていなかったのに。 ぼくがどんなかおをしているか わかっていたんだから。 「どうしてわかったの?」 ぼくは、おばあちゃんにきいた。
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