ぱんでみっくあふたー

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 ある日、突然世界は終わりを迎えた。  自称周りとは違う中学生の中島希早(なかじま キサ)はその日のことをよく覚えている。  平日、昼。早く授業が終わってお昼ご飯を食べたいと思っていた時刻は12時22分。  教室の中にゾンビが発生した。  その直前に先生が言った「保健室に」という言葉がとても印象的で、今も悪夢が始まる合図となっている。  そこから全てが瓦解するように、世界は崩れていった。  いち早く教室を逃げ出し、トイレの個室に鍵を掛けて閉じこもったのは何故だったのか。  彼女はそれを偶然、と考えていた。たまたま『逃げないと』と考え付いてしまっただけだと。友人のことなど考えすらしなかった。  ただ、ひたすら耳をふさいで歯を鳴らし続けた。  扉の向こうから聞こえた「助けてここを開けて」  隣の個室から聞こえた「誰かそこにいるの?」  全てを無視して半日ほど閉じこもった。  ただ何もせず固まっていただけであったが、キサはこの時のことを振り返り、異常なほど濃密な半日であったとそう感じる。  やがてすり減った精神は扉の鍵を横にずらしていた。ふらふらと脚が外へ向かうと、そこには誰もいなかった。  友人も、生徒も、ゾンビも。  あったのは血と死体。びくびくと痙攣する肉塊。  後になって分かったことだが、ちょうど外に出たこの時間はゾンビの食事の時間だったらしい。  運良くか、それとも悪かったのか。がらんどうの校舎に足音を響かせた。  「今日は朝から何も飲んでないな」と、摩耗した頭でふらつきながら。  そしてキサはコノミに出会った。
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