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部屋を出ると、リビングに誰もいないことを確認。
そしていそいそと冷蔵庫から缶コーヒー持ち出すと部屋へと向かう。
誰にも会わなかった事に安堵し、胸を撫で下ろす。
家の中を移動するだけでも精神的に気を張る為か、かなり疲れてしまうのは毎度の事なのだが。
このような日常的で嫌な気分を解消する為にゲームに明け暮れていると言っても過言ではない。
銃で敵をひとしきり倒したら気分も変わるだろう。
こんな時はさっさとゲームの世界に浸ってしまうに限る。
そう自分に言い聞かせながら部屋のドアを開けた─のだが。
「初めまして、たかし様。わたしは─」
反射的にドアを閉じると、ドアの前で真顔でフリーズしてしまった。
あれ?
今のは…?
俺の部屋で美少女が正座してたように見えたんだけど。
生まれてこのかた母親と妹以外の女性を部屋に入れたことがない俺にとって、その光景はあまりにも現実からかけ離れていた。
パッと思い当たる結論から言うと、幻覚?と言うのが正直なところ。
何時間もぶっ通しでゲームをしながら日光も浴びずに不規則な生活をしている身の上、こんなものが見えてしまってもあまり不思議とは思えない。
むしろ、ついに見えてしまったか!という感じである。
再び部屋へ入ると、当たり前のように女の子の姿はなかった。
「…………。」
まあそうだよな、幻覚だもの。
ちょっとガッカリだけど、精神病院送りは流石に嫌である。
パソコンなんぞ持ち込める病院なんて聞いたこともないし、精神病棟に入院なんてことになればゲームなど出来る訳がない。
それは困る。
カコッと缶コーヒーを開けながら机に向かい、一息付くようにコーヒーを流し込む。
とにかく忘れよう。
流石に多少は生活習慣を改善しようかと思ったりしたのだが。
結局懲りずにパソコンへと向かった。
「あのぉ、たかし様で間違いないですよね?」
「ブホォ」
カフェインをディスプレイにぶちまけ、後ろへ振り返る。
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