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私はもう二十代後半差し掛かっているが、未だ独身。
箱入り娘で育ったせいか、男性との恋愛経験も乏しい限りだ。
そんな時、私のこの学校での職場と言える保健室に彼がやって来た。
『すみません、絆創膏貰えますか?』
右手の薬指に小さな切り傷。
理由を尋ねれば、
『あはは、紙でスッと切ってしまいまして。』
彼はクシャっと笑った。
左手を首裏に当てながら、少し恥ずかしそうに。
私もそんな彼を見て、クスッと笑いながら絆創膏を渡せば、ポケットからこのビスケットを取り出して、私に渡したのだ。
何故ビスケットがポケットから出てくるのかわからないけど、なんだか可愛らしいなと、少しときめいた。
これが歳下に対する母性の様なものなのか、違うのかはまだわからないけど、
なんとなくこのビスケットが勿体なくて、デスクの引き出しに仕舞うことにした。
包装の裏に記されていた賞味期限はまだ大丈夫そうだったからかもしれない。
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