ビスケット

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「失礼します。」 「ジャケット乾いてるわよ。」 「ありがとうございます。」 放課後のチャイムが鳴って、生徒達が部活動を始める時間。 窓際でいつものように、ジャスミンティーを飲んでいる時に彼はやって来た。 カップをデスクに置いて、ジャケットを彼に渡せば、またペコリと頭を下げた。 朝は濡れていた黒い髪の毛も今は乾いて、とても柔らかそうにふわふわしている。 「雨やまないですね。」 「そうね。」 窓の外は朝と変わらず。 「なんかいい匂い。」 「ああ、ジャスミンティーよ。」 「ジャスミンティー?」 彼はくんくんと部屋の空気を吸う。 「放課後、ひとりでティータイムしてるの。」 「そうなんですか。」 「普段は生徒達の部活動を眺めてるの、雨だと見れなくて寂しいわ。」 「なるほど、良いですね。」 「今度時間ある時来てくれれば、お茶くらい出すわよ。」 「うわ!素敵なお誘いです。是非。」 彼は人懐っこい笑みを浮かべた。 なんだか子犬みたいな人だな。
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