記憶喪失

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果てない砂漠のど真ん中にひとりで取り残されるのと、街中で人ごみにぶつかっても声もかけてもらえない雑踏と、 どちらが本当の孤独の中にいるのだろう。 自分は、今まさしく、後者に旗をあげたい気分だ。 人で溢れる雑踏の中。 ただ立ち尽くしている自分。 ここがどこかもわからない。 自分が誰かもわからない。 記憶喪失なんてものは、なったりしたら、 「ここはどこ!」 って叫ぶものだと思っていたのだけれど。 実際には、ただ唖然と立ちすくむしかないのだ。 いきなり放り込まれたこの現状に、ただ呆然と突っ立っていた。
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