記憶喪失

7/10
前へ
/10ページ
次へ
ショーウィンドゥに背中をくっつけて、途方にくれながらうなだれれば、なんだかとても悲しくなってきた。 なんであたしは、こんなことになっているのだろう。 欲しい靴は買えないし、自分のことも忘れている。 一体どうして? なんでこんなひどい目に? すると、 「キミ、大丈夫?」 ふと、頭からかけられる優しい声。 パッと顔をあげれば、そこには、さっきショップの中で目が合った男性店員が立っていた。 こうして見るとなかなかのイケメンだ。 「キミ、すごく困っているみたいだけど、どうかした?」 重ねられる優しい声はあたしの耳にじんと響く。 「ボクもうあがりなんだ。良かったら、話聞くよ」 あたしは耐えられず、ついにシクシク泣き出してしまった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加