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「キミ、お願いだからこんなとこで泣かないで。ボクが泣かせてるみたいだから、ね」
彼は困ったように言いながら、あたしの肩を抱く。
本当なら初対面の男に身体を触らせるような女ではないはずだけれど、今はどんな温もりでも嬉しい。
心細さで、芯まで凍えそうだ。
すがるように見上げるあたしに、ゴクリと唾を飲んだ彼は、
「……ねえ、どこかゆっくり出来るところへ行こうか」
あたしを誘った。
彼の誘いに、おとなしくついて行くあたしを、どうか軽い女だなんて責めないで。
誰だって、記憶を失って一文無しになってしまったら、不安でたまらないんだから。
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