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竜次と竜也
「おい!竜次(りゅうじ)!お前……鮎川(あゆかわ)に惚れてんだってな……」
「はぁ!?なんで俺が!?竜也(たつや)!テメー!テキトー言ってっとぶっ殺すぞ!」
「へーそうか……なら俺の女にしようかな……」
「……あ?(怒)」
俺達は、極悪校で有名な<提督高校>の三年。
竜也は、地元じゃ喧嘩最強……。
コイツがいなけりゃ、俺が最強だった。
俺達は、泣く子も黙る(古い)地元じゃ負け知らずの最強コンビだった。
鮎川ってのは、めちゃくちゃマブい女(死語)で……。
ここいらのヤンキー共が、テメーの女(彼女)にしたくて、こぞって狙っていた。
そんな、モテモテの鮎川に、この竜也こと、及川竜也(おいかわ たつや)は、幸運にも告られたらしい。
俺は今更、出した言葉を納められず……後悔する事となる。
だが、
おかけで、どこに行くにも一緒だった……。
いつも3人で釣るんでいた。
鮎川は、俺と竜也を両脇に抱え、まるでお姫様気取りだ。
見た目も中身も、めちゃくちゃヤンキーだけど……。
おっと……もう一人。
舎弟の貞吉(さだきち)を忘れてた。
自動販売機から、皆のホット缶コーヒーを買って、熱そうに両手で運んでくる。
「おい!貞吉!早く来いよ!」
「アイツ…絶対1本落とすぜ……」
「ウッフフ……」
「及ちゃーん!山島ぁ!鮎ちゃーん!……あち!あち!わっ!」
ボトッ!
コロコロ……
貞吉が案の定、勢いよく缶コーヒーを1本落とした。
地面にバウンドして、こちらの方へ、コロコロと転がる。
竜也は、煙草を吸いながら、そのへこんだ缶コーヒーを手にとる。
「貞吉!サンキュー!俺はこの落ちたヤツでいいぜ!」
竜也は、強いだけじゃない。
優しいヤツだった。
不意に、笑顔の竜也の口に咥えた煙草を、奪い取る鮎川。
それから、口を窄め煙草を深く吸い込む。
ふぅー、と色っぽく煙を吹かすと、俺にも吸えと促す。
口紅の付いた煙草を貰い、俺は戸惑いながら、吸った……。
俺達は、夕暮れの繁華街を、半分は酔っぱらいの大人達に混じって歩く。
高校生の癖に、生意気にこの煙草には、この珈琲が合うなどと、制服のまま、能書き垂れながら歩く。
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