竜次と竜也

1/66
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

竜次と竜也

「おい!竜次(りゅうじ)!お前……鮎川(あゆかわ)に惚れてんだってな……」 「はぁ!?なんで俺が!?竜也(たつや)!テメー!テキトー言ってっとぶっ殺すぞ!」 「へーそうか……なら俺の女にしようかな……」 「……あ?(怒)」 俺達は、極悪校で有名な<提督高校>の三年。 竜也は、地元じゃ喧嘩最強……。 コイツがいなけりゃ、俺が最強だった。 俺達は、泣く子も黙る(古い)地元じゃ負け知らずの最強コンビだった。 鮎川ってのは、めちゃくちゃマブい女(死語)で……。 ここいらのヤンキー共が、テメーの女(彼女)にしたくて、こぞって狙っていた。 そんな、モテモテの鮎川に、この竜也こと、及川竜也(おいかわ たつや)は、幸運にも告られたらしい。 俺は今更、出した言葉を納められず……後悔する事となる。 だが、 おかけで、どこに行くにも一緒だった……。 いつも3人で釣るんでいた。 鮎川は、俺と竜也を両脇に抱え、まるでお姫様気取りだ。 見た目も中身も、めちゃくちゃヤンキーだけど……。 おっと……もう一人。 舎弟の貞吉(さだきち)を忘れてた。 自動販売機から、皆のホット缶コーヒーを買って、熱そうに両手で運んでくる。 「おい!貞吉!早く来いよ!」 「アイツ…絶対1本落とすぜ……」 「ウッフフ……」 「及ちゃーん!山島ぁ!鮎ちゃーん!……あち!あち!わっ!」 ボトッ! コロコロ…… 貞吉が案の定、勢いよく缶コーヒーを1本落とした。 地面にバウンドして、こちらの方へ、コロコロと転がる。 竜也は、煙草を吸いながら、そのへこんだ缶コーヒーを手にとる。 「貞吉!サンキュー!俺はこの落ちたヤツでいいぜ!」 竜也は、強いだけじゃない。 優しいヤツだった。 不意に、笑顔の竜也の口に咥えた煙草を、奪い取る鮎川。 それから、口を窄め煙草を深く吸い込む。 ふぅー、と色っぽく煙を吹かすと、俺にも吸えと促す。 口紅の付いた煙草を貰い、俺は戸惑いながら、吸った……。 俺達は、夕暮れの繁華街を、半分は酔っぱらいの大人達に混じって歩く。 高校生の癖に、生意気にこの煙草には、この珈琲が合うなどと、制服のまま、能書き垂れながら歩く。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!