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今日も捜査1課は忙しい。
毎日毎日良く事件が起こるものだと感心をしながら、黒羽刑事は資料室で山の様な資料を相手に2杯目のコーヒーを啜っていた。
黒羽は白井刑事と共に不可解な難事件……つまり未解決事件を追っていた。
「白さん、ちょっと休憩にしません?」
黒羽の言葉に、54歳になり白髪混じりの白井は、老眼鏡を外してからノートパソコンの画面を畳んだ。
「あー疲れた。歳は取りたくねぇな。老眼鏡を掛けなきゃ何にも見えねぇし。……カラス、俺にもコーヒーのお代わりをくれ」
「はい。どうぞ」
あだ名で呼ばれた黒羽は、言われたタイミングで白井の空になったカップにコーヒーを注ぐと、白井の口元が緩んだ。
「手際よくなったじゃねぇか」
「毎日『言われた事はさっさとやれ』って白さんに言われてますから」
白井は柔らかい笑みを浮かべて、ブラックのコーヒーに口を付けると、ふわりと良い香りが鼻を刺激した。
腕時計に目をやれば、既に11時を回っている。
「……さっきから時間を気にしてますけど何かあるんですか?」
「ん?ああ。昼過ぎに待ち合わせしててな。」
「まさかデートですか?」
白井は呆れた顔で黒羽を見つめた。ふっくらした優しそうな表情が、途端に仏頂面に変化していた。
「ジョークですって!」
「分かってるよ。……そう言えばカラスは【墨田区夫婦殺害事件】は知ってるか?」
その事件は不思議な事件だった。
医師である大原京一郎さんと妻の洋子さんが亡くなったのだ。
京一郎さんは身体中を刺されたことによる出血多量死、妻の洋子さんは心臓を刺されたことによるショック死と診断された。
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