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再び一人になった少女は鞄から鏡を取り出し、くせっ毛ぎみの髪を丹念にチェックし始める。
納得したのかしないのか、微妙に首を傾げながら鏡を仕舞うと、再度公園の時計に目をやった。
時計の確認を終えると、今度は少しソワソワした様子で公園の入り口を見つめる。
「――――――」
入り口付近から少女の名を呼ぶ男性の声。
その声を聞いた少女は表情を輝かせ立ち上がると、男性に向かい手を振った。
少女よりも少し年上のその男性は、少女の側に駆け寄るや否や、優しく少女の髪を撫でる。
少女はそれをとても嬉しそうに受け入れ、はにかんでいる。
少しその場で言葉を交わした二人は、ベンチに置いていた画材道具を持ち、空いた手はしっかりと互いの指を絡ませ繋ぎ、公園の外へと歩き出した。
二人はとても楽しそうに歩く。
今、生きているこの瞬間の喜びを胸いっぱいに感じ、幸せそうに笑っている。
いつか願った、哀しみや苦しみで泣くことのない幸せな世界で――
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