気付いた気持ち

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赤土色の乾いた大地。 風が吹けば砂が舞い上がり、鼻先に届く埃っぽい土の匂い。 見渡す限り一面に広がる赤い大地には、植物らしきものは一切見えない。その代わりに大地と同じ色をした岩が、まるで木のように天に向かって伸びている。 空に広がるのは不気味さを孕んだような黒い雲。 時折、雲の隙間から覗く光は、それとは逆に心に安らぎを与えるような蒼く大きな月。 赤い大地と同じ色をした石柱群。そして、黒い雲。 閑散としたこの場所に立つ一人の女。 女は狼のような獣の耳と尾を生やし、指先に伸びる爪も獣のように鋭い。 長く乱雑に伸びた髪は風が吹く度に大きく舞い上がっている。その度に苛ついたように髪を後ろに戻しているが、フサフサの大きな尻尾は、意に反し嬉しそうに揺れている。 女は誰かを待っているのか、常に周囲の気配を探っている。
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