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良太は心の中から怒りがこみあげてきた。
一人で自由を味わいたかったのに佳代に束縛されるのは嫌だった。
良太と佳代はその場で揉み合いになり佳代がバランスを崩してホームから落ちてしまった。
そして、佳代は頭から血を流し仰向けに倒れている。
佳代の着ている白いワンピースの中央あたりが、血の色で真っ赤に染まっている。
良太は血を見ると体から冷汗が出てくるのを感じた。
そして薄暗闇に佳代の目が良太を睨んでいる様に見え怖くなり、佳代をそのままにして到着した列車に飛び乗った。
それから、良太は佳代がどうなったのか分からないままだった。
だが心の中ではきっと死んでいるのだろうと思ていた。
都会に出てきて、良太は佳代の事を忘れようとしていた。
仕事もホストをやってお金にも困らず楽しく過ごしていた。
京子と言う彼女も出来て、今では同棲をする中になっていた。
時間と共に佳代の事は忘れかけていた。
そんなある日、良太のもとに一通の手紙が届いた。
それは、佳代からの手紙だった。
逢いたいから帰って来てと言う内容だった。
良太は、佳代は生きていたんだと内心ホッとしながらも、だが、佳代のあの状態は死んでいてもおかしくなかったのだがと不安もよぎった。
取りあえず、良太は京子に帰省することを話す。
付いてくると言う京子を説き伏せて一人田舎に帰る事にした。
次の日朝一番の電車に乗り帰省する。
良太の心の中には佳代に対する罪の意識があった。
それは佳代にけがを負わせたことそれと、京子と言う彼女を作ってしまい、佳代を捨てる事になったと言う罪の意識だ。
そんな気持ちを持ちながらも、何故か佳代に会いに行かねばならない様な気がした。
それは、何者かに引寄せられている様だった。
列車を乗り継ぎ夜になるころ故郷の駅に着いた。
良太が駅のホームに降りると、街灯の下に白いワンピースの女性が立っていた。
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