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ポートレートの前に立つ俺にしばらくして、
「勇斗」
振り返ると少し息を弾ませた美幸の姿。
「郷田さんが皆で乾杯をするから降りてきてって」
スマホの強奪には失敗したんだろう。だけど良いよ。俺たちの幸せをみんなにも知ってもらえばいい。
「勇斗?」
「ああ、行くよ、美幸」
俺は美幸に近寄って手を繋ぐ。美幸は驚いたけれど、それをほどこうとはしなかった。
階段を下りようとしたとき、
「美幸」
美幸が俺を見上げる。柔らかくそのきれいな顔に笑いかけると、
「愛しているよ」
サムシングブルーで飾られた美幸の頬がほんのりと赤く染まった。
その表情をフレームに収めて、俺は心の中のシャッターを押した。
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