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「嘘だろ...」 眼前の風景を見回した時、思わず絶句してしまった。 「何で、何で無いんだよ...」 そこは七星佐里が落下して死んだはずの谷の底だった。 彼女の遺体があるはずなのに何処にもない、期間から推測するに白骨化して骨すらも塵となったとも考えにくい。 「動物に捕食されたのか?」 そう考えた方が都合が良かったが、それなら骨やら衣服なんかが残っているはずだ。 何かがおかしかった、裏でありえないことが動いているようで恐怖すら感じた。 「見つからねえな...」 佐里が落ちただろうと推測される位置を重点的に探しているが、彼女の遺体なんて何処にもなかった。 その後も探し続けたが、そろそろ日が暮れそうなので垂らしたロープをよじ登って谷を上がった。 「翔介君、見つかったの?」 「...駄目だ、骨すらなかった」 「そう、なんだ...」 佐里の遺体が見つからない理由は定かではなかった。 「取り敢えず戻ろう、今日はありがとう、送って帰るよ」 「あ、いいよ...っ...!!」 すると彼女が腹部を押さえつけて跪いてしまった。 「おい、どうした!?」 「...何でもないよ、ちょっと気分が悪かっただけ」 「いや、でも...」 ここ数日明らかに彼女の様態がおかしいことは医学的な知識を持ってない他者の目線からでも明白だった。 「大丈夫だよ、翔介君」 「...」 あれから付き合うようにはなったが、まだ名前で呼び合うのは恥ずかしい面がある。 佐里の時だって名前で呼び合ってたのにな... 「早く帰ろう、今日はもう探せれないだろうしな」 「うん、そうだね」 二人は道路まで戻り帰宅の準備をした。 「送って帰るよ」 「いいよ、一人で大丈夫」 そう言うと彼女は何かに急いでいるように家の方向に歩いていった。 「...何かがおかしい」 彼女が翔介の家に来た時から明らかに異変が起きていた。 それが一体何なのか、要因を特定するには情報不足だった。 ____ 「ただいま」 ドラッグストアのビニール袋を手に持って、無事に帰宅した美奈子は真っ先にトイレに閉じこもった。 「...陽性反応」 その棒状の代物が確かにそう記していた。 「私...妊娠したんだ...」
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