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「恐らく今もこの事件は続いている、必ず犯人を見つけ出せ」
「了解しました!!」
快く返事をした重見は世間話のつもりであることを聞いた。
「警視総監殿、娘様の容体は?」
「...強い洗脳を受けていたようだ、自分を陥れた沢谷一弥を善人だとおかしな冗談を言うほどにな」
「...そうでしたか、それでは失礼します」
それだけを聞くと、重見は部屋を退室した。
「何だ、居たのか」
「何だとは何よ、私が復帰した時も大して祝ってくれなかったし、本当に冷たいわね」
前島智美、依然沢谷一弥に襲われて気を失っていたが最近になって復帰した捜査一課の仲間だ。
「警視総監は娘が洗脳されたと言っているが、実際どうなんだ?」
「さあ、私は娘さんが精神内科で診察されているところを立ち合わせてもらったけど、沢谷一弥を否定するような言葉は言ってなかった」
「それほど強い精神的支配を彼が施したということか?」
「でも精神内科の診療も一つの洗脳の類だと思うわ、そう考えればどちらが本当の悪か分からないわね」
被害者が犯人などに洗脳された場合、精神内科の診断はまずは犯人からの支配から抜け出したことを納得させなければならない。
しかし警視総監の娘である飛鳥砂夜の診察を担当した精神内科の医師は至って異常なしと判断した。
勿論そんな結果はないだろうと思い、今度は脳に異常があるのかと察し最新鋭のMRIで大脳が正しく作動しているのかを調べた。
結果は異常無し、飛鳥砂夜は肉体的には傷付いていたが、精神的には何の異常も来たしていなかった。
「私ね、本当は沢谷一弥って、そんなに悪人じゃないと思う」
「...馬鹿言え、頭がイカれた殺人鬼だぞ」
「だって、彼の隣に居た飛鳥砂夜は私と話した時、笑うと可愛い普通の少女だった、彼にまた会いたいとまで言っていた」
「洗脳はしていないかもしれないが、沢谷一弥が善人だということはありえない、飛鳥砂夜の発言はただの妄言だ」
「どうしてありえないの?」
「結局飛鳥砂夜は沢谷一弥にとってただの道具だったからだ、山に警察を誘き寄せてクラス全員皆殺し計画を遂行する為に使った捨て駒にしか過ぎなかったんだよ」
「...確かに私達の立場上そう解釈する方が良いのかもしれないわね、彼を善人だと認めたら私達は何の為に戦っているのか根元から覆されるからね」
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