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ガシャ____ 錆びた鉄格子が音を上げながら門が開かれた。 「一日だけだぞ」 「分かってる」 土田は保護施設を出て、目的もなく歩き始めた。 「土田」 「...そんなところで何してる?」 前方に立ちふさがったのは制服を着ていた翔介だった。 「今日は学校があるはずだが?...って言ってもお前不登校になったんだったな...」 「ああ、一緒に行こうぜ、学校に」 「は?」 まるで彼が宇宙語を話しているかのように、その言葉の意味が理解できなかった。 「行くわけないだろ、行ったところで何になるんだよ...」 「お前、安藤と付き合っていただろ?」 「それがどうした?」 「安藤に何か言われて、多村を殺したんじゃないのか?」 もしそれが真実なら全てが繋がる。 「お前にそれを言う義理はねえ」 「なら学校に行って皆の前で真実を言えよ、お前のせいで伊勢崎達がイジメられてるぞ!?」 「...!?」 その事実を伝えると彼の表情が一変した。 「...知るか」 「お前のせいで他人が傷付いてんだぞ!?自分の仕出かしたことぐらい責任持って落とし前つけろよ!!」 「黙れ!!」 そこまで攻め立てると、彼は武力行使で翔介の口を黙らせた。 「っ...」 顔を殴られて口の中から血の味が滲み出した。 「俺は...俺にはあいつしかいなかったんだ...」 「...?」 「中学生の時に付き合っていた彼女が、安藤由香里にそっくりだった...」 土田は過去を語りだした、どうして由香里と付き合ったのかさえもその過去を聞くだけで説明は事足りた。 「その彼女は、暴力的だった俺に愛想つかして別れさせられた、でも俺は何年経とうとその子が忘れられなかったんだ...!!」 「それで、その人に似ていた安藤を彼女にしようよ思ったのか」 「ああそうだ、だから俺は彼女に利用されてようが絶対に口は割らない、彼女には生きて欲しいから!!」 利用されてんだよ、まるで駒みたいに。 あいつにとっては能無しの無能な捨て駒のように扱われてんだよ。 「ならクラスメイトに伊勢崎達の誤解を解くだけでいい、あいつらが殺人に加担してないっていう真実だけでも証明してくれ」 「しつこい奴だ、そんなに俺を学校に連れて行きたいなら物理的に引っ張りだしてみろ」 それはつまり、拳と拳のぶつかり合いで勝負しろと言ってるようなものだった。
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