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「...俺がお前に勝てると思うか?」
「勝てないだろうな、何故ならお前は俺と正反対の生き方をしてきたからだ」
彼の言うことは全く持って否定できることではなかった。
どちらかと言うと多村のような生き方をしていた翔介には、武術の心得など微塵もない。
だが一つだけ彼には弱点があった、それは土田はただの暴力であり武術の心得がないこと。
そして自分も武術の心得はないが、記憶があるということ。
「分かった、お前を引き摺ってでも学校に連れて行く」
「そうこないとな...!!」
土田は勢いよく拳を振るが翔介には当らない。
「くそ、ちょこまかと...」
「無駄だ、お前の拳は俺には当らない」
翔介は何も特殊な事はやっていない。
ただただ、肩の力を抜き拳の軌道を読んで交わしていた。
「何でだ、この前は弱かったのに!!」
「口動かすぐらいなら手を動かせ」
交わす時に無駄な力を入れないことで体が軽く感じる。
これは風に揺られた桜の花を掴み取る感覚に似ている、翔介が桜の花で土田はそれを必死に取ろうと無駄な力を入れている状態だ。
「逃げてんじゃねえよ!!」
「...!?」
肩を掴まれて翔介の腹部に拳が入る。
「捕まえたぞ...」
「...はは」
翔介は土田の鳩尾部分に手を翳して大きく深呼吸をする。
_____!!
「な、何をした...!?」
あまりの衝撃で土田は膝をついてしまった。
「物理的に倒せと言われたから、物理の知識で倒したまでだ」
翔介は手を翳した時に力を入れて彼にダメージを与えた。
これは土田の体内に直接エネルギーを与えたようなものだった。
物理的ダメージの大きさは攻撃の威力と伝わり終わるまでの時間で決まる。
いわゆる物理でいうところの力積だ。
普通のパンチが体に対して威力が伝わる時間は一瞬だが、翔介が行なった型は威力の伝わった時間が長かった。
これはエネルギーと時間の関係にある、普通のパンチでは対象に当る前にエネルギーを発動させている為に、対象に当った時にはエネルギー自体が伝わる時間は少ない。
翔介は手を翳した時に力を入れた為に、本来のエネルギー持久時間で対象に力を流したから力の量が劣っていてもダメージの大きさが上をいったのだ。
この型は古来から中国拳法で伝わる技の一つである為に、当時物理的な知識など少なかった時代に生まれた産物に対して先人達の偉大さが感じられる。
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