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「まだやるか?」
「当たり前だろ、たった一発入れたぐらいでいい気になるなよ!?」
さすがは幾度の喧嘩を乗り越えただけの実力はある、根性や身体能力だけは人一倍優れている。
「上条翔介、てめえを叩き潰してやる...!!」
「俺もそのつもりで挑む、覚悟しろ!!」
二人の拳が交じり合い、それぞれの体に突き当たる。
それぞれの思いも兼ね備えながら、翔介と土田は拳で対話していた。
「くそが...」
「はあ...はあ...」
もう何度も拳をぶつけ合い、お互いに立つのがやっとの状態だった。
「もう何発も入れているのに...どうして立てる...」
「はは...そんなの気合に決まってんだろ...!!」
くそ、人間の体ってものはどうしてこうも感情に囚われるのか...
「来いよ、まだまだ俺はやれるぞ?」
「っ...」
攻撃を仕掛けるか悩んでいると、彼が待ち切れなかったのか翔介の腹部に拳を入れた。
「判断を鈍らせてんじゃねえよ、俺は短気なんだ」
「...はは」
土田の拳を掴んで翔介は肩をとった。
「引っ掛かったな」
「...!?」
彼の顎に強烈な一撃を受けさせて脳震盪を起こさせた。
「が...ああ...」
あまりの衝撃でさすがの土田も倒れこんでしまった。
「俺の勝ちだ...」
「...久しぶりだよ、喧嘩に負けたのは」
彼は負けたはずなのに自然と笑っていた。
「全く、何から何までふざけた野郎だ...一体何処にそんな力があるんだよ...」
「偶然覚えていたただけだ、武術の基本ってやつをな」
「それに、今更あのクラスに何を望む?仮にもお前はクラスを追放された身のはずだが?」
土田の疑問は至って普通の疑問だった、確かに翔介の立場ならクラスメイトがどうなろうがどうでも良いはずだ。
「だが、仮にも俺が居るクラスだから守りたい」
「...くだらねえ」
そこまで聞くと彼は立ち上がり学校の方向に歩きだした。
「けど付き合ってやる、お前のくだらない理想に、それがお前との約束だったからな」
「...ありがと」
「礼なんか言うんじゃねえよ、きもちわりい」
その時の彼の表情は窺えなかったが、何だか悪い気分ではなさそうだった。
「さっさとあのクラスに行くぞ」
「ああ」
二人は前だけを向いて歩き出す
そして動き出す
全ての物語が、全ての記憶が
今ここから歯車が逆回転を始めようとした____
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