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少女は空き缶を手元に寄せ、タバコに火を付けた。
「それ、どうしたの」
少年は洗濯機を起動させて少女の傍へ戻ると、興味のなさそうな抑揚で聞いた。
少女が「それ」とは何を示すのか自分を構成するものを顧みていると、少年は「タバコ」と呟いた。
「買ったの」
「どうやって?」
ようやく少年の考えるところに行きついた少女は、財布からICカードを取り出し、少年に差し出した。
そこには当然少女の名前はなく、男性の名前が記されていた。
「前にくれた人がいたの。禁煙するからって。その前に禁欲しろって話よね」
少女の浮かべる笑みは、お世辞にも健康的とはいえなかった。
「吸う?」
「いや、メンソールは喉に残る感じが好きじゃない」
「そう」
法律上、彼らの喫煙は禁止されているが、彼らは律儀にそんなことを気にする生活を送っていない。
そもそも少女は、学生として生活しているような年齢だ。
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