協力依頼。

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町外れにある小さな旅館で、一人の若い女性の遺体が発見された。 被害者の名は"北川美貴(26)"、恋人と共に宿泊していた旅行客だった。 死因は窒息、現場の痕跡からも絞殺だと予想され、死亡推定時刻は朝七時頃、発見されたのはその約一時間後の八時頃、第一発見者は被害者の恋人の"中島将太郎(26)"。 真っ先に容疑を掛けられたのはこの将太郎だが、しかし完璧なアリバイがあった。 将太郎は、旅先で偶然にも弟"拓真(25)"と再会し、そのまま同行していた。 旅館に着いてからも、久々の再会という事で朝まで飲みながら24時間営業の食堂で語り合い、その事は従業員の証言からも確かで、更には防犯カメラにもハッキリと映っていた。 将太郎曰く、弟の拓真が彼女の美貴と出会うのはまだこれで二度目であり、殺人の動機も見付かりそうにない。 今回この事件の担当になった若手刑事の鰐渕は、頭を抱えていた。 「それで……俺が呼ばれた訳か」 そこへ、鰐渕に頼まれて姿を現した一人の青年は、 「あぁ、すまないな大神。本当は部外者を入れるのはダメなんだが、前回の功績が認められたお前だけは特別に許可を貰った」 前回…"赤羽事件"と呼ばれるようになったあの難事件を、数々の助言でたった一日で解決へと導いた、傲慢にも自称・天才と豪語する、大神だった。 その事件以来、大神と鰐渕は連絡先を交換し、こうしてたまに連絡を取り合っていた。 「どうだ大神、わかりそうか?」 「……」
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