容疑者探し。

2/11
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
「あんたと成瀬って人はどういう関係?正直、その人にはどういった感情を持ってた?」 相変わらず無表情で、しかも無愛想にそう尋ねる大神に対し、藤川は嫌な顔一つ見せず紳士的に答えた。 「彼とは…言わばパートナーのような関係です。僕も彼もまだ無名だった頃から互いを支え合い、そしてここまで登り詰めてきた…僕にとって彼は無くてはならない存在です。そんな彼を、こんな形で失ってしまった……お察し下さい。これからは僕が、彼が遺した大事なモノを一人で護っていかなくてはいけませんから。それでは、失礼します」 実に誠実な想いと言葉だった。 それに対し大神も流石に返す言葉も無く、無言のまま立ち去る藤川を見送る。 「ちょっと大神!今の質問は失礼過ぎるでしょ!」 そんな大神の頭を、奈津美はまた何処からともなく取り出したハリセンで勢いよく撃ち抜き、それにより豪快に転がり回る。 「全く…」 一方で大神は、鼻血を垂らし仰向けに倒れたまま天井を見上げ、ボソッと呟く。 「あの人…自分が信じた"芸術"以外に全く興味が無い反面、それに関しては愚直にのめり込むと見た」 それは、恵まれた容姿でありながら身嗜みには無頓着で、しかし自身が創造した作品には惜しみ無い努力を込めるといった、大神の印象だった。 「そんな人が誰かを殺しそうにないか…他を当たろう」 そう一人で納得すると、バッと勢いよく起き上がる。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!