1 君と歩く、翡翠の道 ♯1

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「――わぁ、蝶々がいっぱい! 何頭いるんだろ。綺麗ねぇ。 あ、このお花も可愛いな。アゲハチョウも、とまってる!」 生命力あふれる野の花たち。 色とりどりの花々に目を楽しませてもらいながら、歩を進めていた。 川岸に向かって目線を下げれば、土手に咲く菜の花をバックにモンシロチョウが飛び交っているのが見えて、テンションが上がる。 そして自分の足元に目線を移すと、小さくて可憐な花にアゲハチョウが1頭、まるで羽を休めるかのようにとまっているのを見つけた。 「何ていうお花かしら?」 可憐な赤紫色の花弁をよく見ようと、しゃがんで覗き込んで。 「ねぇ、奏っ…………あ……」 自分の背後に求める姿が居ないことを、振り向きかけてから思い出す。 また、だ。 大好きな人の姿が近くにないことに、まだ慣れない。 上げていた頭が、だんだんと下がっていくのを止められない。 寂しい、な……。
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